食品業界で広がりを見せているプラスチックパッケージの代替市場は、既存製品に対して環境負荷面での優位性があると考えられており、日本でもその市場規模が拡大しています。本記事では、主に環境負荷の観点から、プラスチック代替品の留意点を解説します。

プラスチックがもたらす環境への影響

プラスチックは幅広く使用される一方で、その特性から環境負荷の高い物質であると言われています。プラスチック、別名合成樹脂は石油を原料とし、高分子化合物から形成されます。プラスチックは軽量で破損しにくく水分や酸素を通しにくい一方で、加工や着色が容易であり食品保護に適していることから、様々な業界で幅広く活用されています(*1)。

しかし、プラスチックは自然分解されないという特性を持っており、自然界への流出により半永久的に残り続けてしまうという問題があります。その例として、近年注目されているのが海洋に流出するマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックとは、プラスチックが粉砕され、5ミリメートル以下の微細になったものを指します。陸地でリサイクルされずに廃棄されたプラスチックの多くは道路の排水口や河川を通じて海洋にたどり着き、その数は毎年800万トン以上に及び、地球規模でのプラスチックごみの行方として、リサイクルは全体の9%にとどまり、79%が埋め立て処分やその他の不法投棄となっていると言われています。国連によると、2050年には海洋プラスチックは魚の量よりも多くなると予想されています(*2)。

また、近年、マイクロプラスチックは海や河川を汚染し、生きものや人体への影響も及ぼすことが研究で明らかになってきました。具体的には、マイクロプラスチックは海水で汚染物質を癒着させる機能を持ちます。海洋には今まで蓄積された農薬や潤滑油によって構成された残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれる有害化学物質が存在しています。この物質は油との親和性が高く、合成樹脂から形成されるマイクロプラスチックに癒着して海洋の広い範囲を移動することが研究によって明らかとなってきました(*3)。

海洋生物が有毒物質を癒着させたマイクロプラスチックが誤食してしまうことにより、生態系に影響を及ぼし、食用魚を汚染するという問題もあります。科学ジャーナル「ネイチャー」によると、東京湾の調査で釣った64匹のイワシのうち、49匹のイワシの体内からマイクロプラスチックが発見されました。これは全体の約77%にあたります(*4)。

生態系の上位になるにつれて、生物濃縮が行われるため、海洋生物の体内に蓄積されたプラスチックとそこに癒着した有害物質の濃縮度も上がります。このように、体内に濃縮されたマイクロプラスチックを含む魚を人間が食すことで健康へ影響をもたらすことが指摘されています。具体的には、がんの発生率の上昇、生殖機能の低下、子供の発達障害につながる可能性があります(*5)。

以上、自然分解されないというプラスチックの特性により、海洋に流れ着いたマイクロプラスチックは海の生態系を破壊するだけでなく、人間の健康にも被害をもたらす環境や生物への負担が大きい物質だと言えます。

食品業界とプラスチック廃棄物の関係性

食品業界はプラスチック排出に大きく貢献していることから、その削減が求められています。 農林水産省によると、2016年にゴミとして排出されたプラスチック980万トンのうち、40.9% を占める401万トンが食品業界に由来する食品トレイやレジ袋、発砲スチロール等の容器包装・コンテナ類です(*6)。

食品業界のプラスチック使用割合が高い要因の一つに、過剰包装等により、一度しか使用されないプラスチックの量が多いことが挙げられます。また、日本は一人当たりのパッケージ用プラスチックの発生量がアメリカに次ぐ第二位であり、国際的にもパッケージに使用するプラスチックの削減が求められています。

プラスチック廃棄物の輸出の不透明さ

また、プラスチック廃棄物にまつわる輸出は不透明です。従来、自国でリサイクルされないプラスチックは、埋め立てすることが一般的であり、日本を含め、埋立地に限りがある国々では廃棄物を輸出するという政策をとっていました。中国は日本を含む世界各国から多量の廃プラスチックを輸入し再生利用しており一ヶ月に10~14万トン前後のプラスチック廃棄物を輸入していました(*7)。

しかし、環境的負担により2017年に生活由来のプラスチック排出物の輸入を停止することをWTOに通告しました。日本では2017年の停止以降、中国以外の第三国への廃棄物の輸出が増加しました。しかし、これらの国でも輸入規制の強化が見られ、全体としてリサイクルされないプラスチックの行方が不透明になっています。

プラスチック廃棄物にまつわる国内外の政策

このような動向に対し、国内外ではプラスチックのリサイクル率上昇と、廃棄規制を強化する制度が確立されています。例えば、2018年に欧州委員会は使い捨てプラスチック製品を全面禁止する規制案を可決し、2021年から開始しました。適用される使い捨てプラスチック製品は9種で、そのうちの7種が食品業界に由来するプラスチックです。該当するプラスチック製品は市場への流通禁止措置が取られます。また、2020年にはEU内での新たな分担金制度として、非リサイクルプラスチック量に基づいた分担金の計算方法を採択しました(*8)。国内の取り組みとしては、2020年には全国でレジ袋が有料化され、店舗によって2~5円ほどで販売されています。一方で、プラスチックの代替としての植物由来のバイオマス素材が25%以上配合されている袋や、海洋生分解プラスチックの袋は対象外となっています(*9)。

このようなプラスチック削減トレンドより、プラスチックの代替としてより環境に良いとされる素材の需要も増しています。

プラスチックの代替

プラスチックの代替として用いられる素材の開発が進んでいますが、代替品の与える環境負荷については様々な研究がなされています。 本記事ではその中でも現在市場に多く出回っているトウモロコシや微生物生分解性プラスチックを含むバイオプラスチックと、紙タイプの2種類の代替プラスチックと、その環境への影響を解説します。

バイオプラスチックの環境負担

日本バイオプラスチック協会(JBPA)によると、バイオマスプラスチックとは、「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的または生物学的に合成することにより得られる高分子材料」(*10)と定めています。生物由来のため、従来の石油由来よりも自然界で分解されやすいという特徴があり、環境に良いとされてきました。事実、2020年から導入されたレジ袋の有料化においても、バイオプラスチックで作られた代替のレジ袋であれば有料化の対象外となる制定がされています。バイオプラスチックへの需要は高まっており、環境省によると、2016年から2021年の間に生産量が50%増加したと言われています。(*12)

一方、国連環境計画(UNEP)の報告書は、バイオマスプラスチックについて否定的な見方をしています。各種のレジ袋の生産から廃棄後までの環境影響に関し、海外の7件の研究結果を分析した結果、環境中で分解されやすいバイオマスプラスチック(生分解性プラスチック)は、ごみ発生は使い捨てプラスチックより小さいものの、焼却による温暖化や海洋酸性化への影響、含まれる化学物質による汚染などを考慮すると「最悪の選択肢である可能性が高い」と否定的見方を示した報告書を公表しました。(*13)例えばバイオマスプラスチックに分類される、トウモロコシのデンプンからつくられるポリ乳酸は自然分解する場合、特に高熱(60度以上)と適切な湿気(60%以上)を必要とします(*14)。ポリ乳酸のリサイクルは特殊な分解環境を必要とするため、他のプラスチックとの分別が必須です。しかし、見た目が通常のプラスチックと類似しているため市区町村では混入される場合が多く、処分の選択肢としては、焼却か埋め立てになってしまいます(*14)。そして、国連環境計画の同報告書は、埋め立てを行った場合、強力な温室効果があるメタン発生の要因になりうる物質であることを指摘しました(*15)。

その他、ポリ乳酸は比較的分解されやすいと言われてきましたが、海洋環境中では生分解されるまで長期間かかり、長期に渡ってマイクロプラスチック化してしまうということが判明しました(*16)。マイクロプラスチック化すると、その周りに有害物質を引きつける効果を持っており、富栄養化など、海洋生態系へも影響を及ぼします。

以上、ポリ乳酸は通常の石油由来のプラスチックと比較し自然界で分解されやすいことから、より環境に配慮した選択として認識されていました。しかし、そのライフサイクル全体を考慮すると、現実的な焼却方法の制限により環境負荷の大きい物質であることが明らかになっています。

紙の環境負担

プラスチックパッケージの代替品として、紙パッケージが注目を集めています。紙を使用したパッケージの需要が増大しており、日本の紙包装市場は2021年か2060年までの間にCAGR 5.6%で成長すると推定されています(*17)。

紙を使用することは森林伐採につながり環境への影響が多いと言う意見がありますが、FSCによると、紙の原料としての木は適切な量を適切な頻度で伐採することは環境に良い影響を与えるとも言われています(*18)。具体的には、森林全体の保全を行う際には植栽した木を間引きして密度を調整する「間伐(かんばつ)」を行わなければ、木立の間に日光が差し込まず下草が生えないなどにより土壌が失われ、土砂崩れの原因となりうります。また、適切な伐採が行われなければ木の劣化が進み、二酸化炭素の吸収量が低下すると言われています(*19)。そこで、持続可能な状態で森林を保全するためには木を伐採する必要があり、それがプラスチック代替としての紙の生産に貢献していると言う側面もあります。

一方で、紙の特性として水分に弱いため食品パッケージに使用される際は多くの場合ラミネート加工が必要となります。この加工にプラスチックが使用されているため、適切なリサイクルが行われていないという懸念もあります(*20)。

紙素材のリサイクルは水を必要とします。一方で、プラスチック素材を分解するためには熱が必要です。そのため、現在の技術で紙素材を傷つけずにラミネートの元となるプラスチック素材を分解することは、不可能です。プラスチックの代替として使用する紙においては、ラミネート加工が施されている場合が多く、それらを再利用することは困難であるため、結果的に環境負荷は高くなっていると言われています(*21)。

また、FSC認証のない紙パッケージは適切な木の栽培を行っていない可能性があるため、大量伐採等、森林破壊へとつながっている可能性があります。例えば、インドネシアでは紙生産での大規模な森林伐採が報告されています。最も被害が大きいリアウ州では年間森林減少率11%を記録し、実際に破壊された森の24%は紙パルプ用のアカシアの植林によって行われたと言われています。森林減少の多くは、紙の原料となるパルプチップ(木片)を扱う、2社の大手製紙企業とその他パーム油企業だと言われています(*22)。

その他、紙由来の包装の生産過程や輸送過程での環境負荷も指摘されています紙製品の生産に使われるエネルギーは、プラスチックより約10パーセントも多いことを報告する研究もあり、そうした製品の一例に紙袋が挙げられます。さらに紙製品では、プラスチック製品を作るときの4倍もの水が必要になると言われています(*23)。輸送過程において、紙製品はプラスチック製品と比較し重くかさばります。これは、輸送で必要とされるエネルギー量が高いことを指しており、結果的にGHG排出が多くなるという指摘があります。事実、ポリ袋の輸送に必要なトラックの台数は、紙袋の7分の1であることから、(*24)輸送時にかかるGHG排出量はポリ袋よりも多く、環境負荷が大きいと言えます。実際に、プラスチック製品と紙製品(プラスチックによるコーティングの設定を含む)の環境影響を比較した調査によると、廃棄物や水資源消費、生態毒性といった観点では紙が劣位となりました(*25)。このような代替品としての紙の使用の問題に対して、例えば、アメリカのニュージャージー州では、店舗やレストランでの使い捨てプラスチック製の袋を全面的に禁止するとともに、使い捨て紙袋も禁止しました(*26)。

LCA評価から見るプラスチック代替物質

このように、プラスチックの代替としてバイオプラスチックや紙が注目を集めていますが、製造や輸送、廃棄過程に注目すると、環境負荷が大きいものがあることが明らかになりました。そのため、素材の環境負荷を考える際はその素材が辿るライフサイクル全体を考慮する必要があります。

ISOでも定められ国際的にも認知されているライフサイクルアセスメント(LCA)は、原材料の調達から製造、加工、流通、販売、廃棄にわたる製品のライフサイクルから、製品が環境に与える影響を定量的に評価する環境影響評価手法です(*27)。

LCA では、製品のライフスタイルにおける各ステップをモデル化することで、生産にかかる資源やその過程で発生する廃棄物や排出物の量を推測し、独自の指標から環境負荷を算出します。また、製品の環境宣言や認証制度などによるマーケティング戦略に貢献します(*28)。

プラスチック循環利用協会(PWMI)のLCA分析によると、プラスチック製容器包装を適切に利用すれば、生産から廃棄までの間の品質劣化や損傷を防ぎ、食品ロス削減につながるため、結果として環境負荷削減につながります。紙の包装とプラスチックの包装を使用した桃1キロをそれぞれ比較したところ、紙の方がプラスチックよりも3倍以上GHG排出量が多いことがわかりました(*29)。持続可能性に貢献するとして注目されるプラスチックの代替製品ですが、その環境性能や持続可能性に対して、様々な意見が存在する中、こうした評価の根拠付けには十分な検討が重要となります。

また、自社製品の環境負荷を定量的に示すことは、他製品との違いを可視化することに繋がり、近年増えるエシカル消費者の購買意欲にも繋がります。2019年博報堂の調査によると、資源をムダづかいしないように気をつけて買う消費者が72.6%いることがわかりました。また、82.7%の消費者が今後、環境や社会に悪い影響を与える商品は買いたくないと回答しました(*30)。サステナブルな消費行動についての詳細は弊社記事をご覧ください。

本記事で取り上げたように、プラスチックはその環境負荷により世界的に規制されつつある物質であり、代替品への移行が求められています。そして、食品業界の容器においてプラスチック依存度が高いことから、様々な代替品が市場に並んでいます。しかし、その代替品はライフサイクル全体において必ずしも環境に良いとは言えず、扱い方によっては最悪の選択となるリスクすらあります。

そうした市場において、自社製品に対してLCA による評価を得ることは、自社のプラスチック製品が、競合製品も含む容器市場の中で、環境面でどのような位置づけにあるかを把握し客観性をもって市場に発信することができます。

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クオンクロップESGグローバルトレンド調査部

出典

(*1)

https://www.maff.go.jp/j/plastic/attach/pdf/pura_kaigi-3.pdf

(*2)

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/beat_plastic_pollution/

(*3)

https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2021/01/21/49322

(*4)

https://www.nature.com/articles/srep34351?WT.feed_name=subjects_ocean-sciences

(*5)

https://serc.carleton.edu/NAGTWorkshops/health/case_studies/plastics.html

(*6)

https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-s1.pdf。

(*7)

https://www.maff.go.jp/j/plastic/attach/pdf/pura_kaigi-3.pdf

(*8)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/88299a30b5475ed7.html

(*9)

https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html

(*10)

バイオマスプラスチック入門

(*12)

https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf

(*13)

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202006300000072.html

(*14)

生分解性プラスチックや紙などの代替素材って実際どうなの?いいの?

(*15)

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202006300000072.html

(*16)

https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-s1.pdf

(*17)

https://www.gii.co.jp/report/mama1039477-paper-paperboard-packaging-market-by-grade-sbs-cuk.html

(*18)

https://jp.fsc.org/jp-ja/newsfeed/shiishetefurasuchitsukuzhipinnidaiwarufscrenzhengzhipin

(*19)

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/3.html

(*20)

https://www.researchgate.net/profile/Kenneth-Marsh-3/publication/5850700_Food_PackagingRoles_Materials_and_Environmental_Issues/links/5a046cf8a6fdcc1c2f6062e0/Food-PackagingRoles-Materials-and-Environmental-Issues.pdf

(*21)

https://www.conserve-energy-future.com/can-you-recycle-laminated-paper.php

(*22)

https://www.wwf.or.jp/activities/eventreport/3440.html

(*23)

http://www.bagtheban.com/wp-content/uploads/2019/02/Quebec_ENGLISH-LCA-Full-Report.pdf

(*24)

https://www.shimizu-chem.co.jp/message.html

(*25)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/32/0/32_139/_article/-char/ja/

(*26)

https://sustainablejapan.jp/2020/09/30/new-jersey-plastics-ban/54335

(*27)

https://www.nikkakyo.org/sites/default/files/ICCA_LCA_Executive_Guid.pdf

(*28)

https://www.vox.com/22787178/beyond-impossible-plant-based-vegetarian-meat-climate-environmental-impact-sustainability

(*29)

https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf6.pdf

(*30)

https://01.connect.nissha.com/blog-nspm-sustainablepack-03/

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